大判例

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大阪地方裁判所 平成9年(わ)4054号

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中井隆司出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金三八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は沖縄県那覇市久茂地二丁目六番二五号ほか一か所において、「AGファイナンス」の名称で消費者金融業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て

第一  平成五年分の実際の総所得金額が九〇五九万一七九二円(別紙一の1修正損益計算書参照)で、これに対する所得税額が四〇二一万二五〇〇円(別紙一の2税額計算書参照)であるにもかかわらず、総所得金額が九八三万四七四円(別紙一の1修正損益計算書参照)で、これに対する所得税額が一三三万八九〇〇円(別紙一の2税額計算書参照)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を作成し、その所得の一部を秘匿した上、同六年三月一四日、大阪市西成区千本中一丁目三番四号所在の所轄西成税務署において、同署署長に対し、右所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、平成五年分の所得税三八八七万三六〇〇円を免れ

第二  平成六年分の実際の総所得金額が一億一二四〇万六五九六円(別紙二の1修正損益計算書参照)で、これに対する所得税額が四九二五万一〇〇〇円(別紙二の2税額計算書参照)であるにもかかわらず、総所得金額が一〇三〇万八五八三円(別紙二の1修正損益計算書参照)で、これに対する所得税額が一二四万八九〇〇円(別紙二の2税額計算書参照)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を作成し、その所得の一部を秘匿した上、同七年三月一〇日、前記西成税務署において、同署署長に対し、右所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、平成六年分の所得税四八〇〇万二一〇〇円を免れ

第三  平成七年分の実際の総所得金額が二億一四九八万六六五九円(別紙三の1修正損益計算書参照)で、これに対する所得税額が一億二八万五五〇〇円(別紙三の2税額計算書参照)であるにもかかわらず、総所得金額が一一〇七万三九七四円(別紙三の1修正損益計算書参照)で、これに対する所得税額が一三八万三八〇〇円(別紙三の2税額計算書参照)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を作成し、その所得の一部を秘匿した上、同八年三月一三日、前記西成税務署において、同署署長に対し、右所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、平成七年分の所得税九八九〇万一七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(各項目末尾の数字は、証拠等関係カード記載の検察官請求番号を示す。)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する平成九年九月一二日付け(二通)、同一六日付け及び同月一九日付け各供述調書(40ないし43)

一  大蔵事務官作成の査察官調書二八通(9ないし36)

一  大蔵事務官作成の「所轄税務署の所在地について」と題する書面(8)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成五年分に関するもの)(2)

一  西成税務署長作成の証明書(平成五年分の確定申告に関するもの)(5)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成六年分に関するもの)(3)

一  西成税務署長作成の証明書(平成六年分の確定申告に関するもの)(6)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成七年分に関するもの)(4)

一  西成税務署長作成の証明書(平成七年分の確定申告に関するもの)(7)

(法令の適用)

被告人の判示第一ないし第三の所為は、いずれも、平成一〇年法律第二四号附則二〇条により同法による改正前の所得税法二三八条に該当するので、判示各罪について所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を選択し、罰金刑については情状により同条二項を適用して、右の罰金額はいずれもその免れた所得税の額に相当する金額以下とし、以上は平成七年法律第九一号附則二条二項により同法による改正後の刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、同条二項により判示各罪の罰金額を合計し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金三八〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人が自らが営んでいた前記AGファイナンスの事業規模拡大の資金を捻出するため、判示の各脱税に及んだ事案であるが、事業規模を拡大し、経営基盤を強固にしなければ将来における経営の安定を保ち得なくなるという被告人の不安感はそれなりに理解できるものの、その必要性が特に差し迫ったものであったとはいえないほか、その充足は適法な経営努力によって試みるべきものであることは言を待たず、客観的に見て、本件犯行の動機に酌量すべき理由があったとは評価し難い。また、脱税の手段は、実際の所得と関係なくいわゆる「つまみ申告」をするという悪質なものであるほか、ほ脱額は合計約一億八六〇〇万円と多額であり、さらに、ほ脱率も平均約九八パーセントと極めて高率である。

したがって、被告人の刑事責任は相当重いというべきである。

他方、被告人が本件各事実を認めて、自己の行為を深く反省し、事業団体の役員を退任するなどしてその意を表しているほか、本件後に法人化された株式会社AGファイナンスの顧問税理士の助言のもとに経理の健全化を実践していること、本件の所得は被告人の経営努力によるもので、その形成過程に違法性がないこと、被告人は、修正申告に基づいて、本件各年分の本税を既に全額納付し、重加算税及び延滞税についても、順次その納付に努めていること、さらに、被告人の前科が相当以前の罰金前科一犯のみにとどまっていることなど、被告人に有利な情状も見いだすことができる。

これらの諸情状を総合し、かつ、被告人の現在における経済的状況をも斟酌すると、被告人に対しては、主文掲記の刑期及び罰金額を定めた上、懲役刑についてはその執行を猶予するのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 植野聡)

(別紙一の1)

修正損益計算書

青山郡治こと

李郡治

自 平成5年1月1日

至 平成5年12月31日

<省略>

(別紙一の2)

税額計算書

被告人 青山郡治こと 李郡治

<省略>

(別紙二の1)

修正損益計算書

青山郡治こと

李郡治

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

<省略>

(別紙二の2)

税額計算書

被告人 青山郡治こと 李郡治

<省略>

(別紙三の1)

修正損益計算書

青山郡治こと

李郡治

自 平成7年1月1日

至 平成7年12月31日

<省略>

(別紙三の2)

税額計算書

被告人 青山郡治こと 李郡治

<省略>

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